特許マップ
代表的な特許マップ
特許マップは、作成する目的で語られる場合と、マッピングとして語られる場合がありますが、ここでは、マイニングを除いた従来から知られているチャートやダイアグラムの手法として説明します。
【統計グラフ~定量的分析】
基本は二軸での集計値が元になります。軸の選択は、一般的には、出願年、出願人、IPC等が用いられていますが、特許明細書の中に存在する要素はすべて使用することができます。最近では、データベースに様々なバリエーションの出力形式が搭載されてきました。そのため、データベース機能を利用してそのままアウトプットしてお届けしたり、データ加工を経てエクセル等の標準統計機能を使用したり、軸の値を単に合計ではなく計算値等に置き換えるなどの工夫をしてバブルチャート等の適宜なグラフを作成します。
【系統分析図~定性的分析】
量で捉えるのではなく、データの性質で捉える分析です。先ほどのマトリックスに数値の代わりにその情報の代表的な性質(テキスト)を出力する分析です。この場合、サイズや性質の表し方をコントロールしにくいため、多くの場合は、手間をかけてマトリクス状態から様々な表現の場へと変更してマッピングすることになります。その代表例が一軸に年代を二軸にはセグメントするなどでして出力する出願系統図です。
【関連図分析】
相互に関係する要素でそれぞれの関係性を示す図表現による分析です(相関分析とは異なります)。代表的な例としては共同出願の様子から、出願人の関係を示した関連図、引用・被引用を示した関連図表現があります。
【分析軸に使用できる特許情報の一般的な属性】
特許明細書は構造化文書になっていて、リレーションされた履歴情報をもっているため、下記の様なデータの属性があります。これらを軸として利用して表現の場を作り出すことで特定の情報群の実態を視覚的に観察し易くできます。よく利用されている軸と組み合わせもあれば、ほとんど見かけないものもあり、アイデア次第で有意義な特許マップが作成できるかも知れません。
(1) 識別・・文献番号/出願番号等の各種番号
(2) 時間・・優先日(発明日)/出願日/公開日(公報発行日)/登録日/権利消滅日/権利期間終了日
(3) 人・・・発明者/出願人/権利者/譲渡者/譲受人
(4) 場所・・優先権主張国(発明者国=発明者住所)/出願国/公報発行国/権利主張国
(5) 内容・・名称/要約/請求範囲(主・従)/詳細な説明/図面/図面の説明/国際分類/自国分類
(6) 状態・・審査審判記録/生死
(7) 関連ノード・・引例/パテントファミリ(国内優先・国外優先)/分割/継続
(8) 法律・・四法種別/新規性喪失の例外等の特記事項
(9)演算・・権利期間/ノード数
【特許情報が示す内容を項目化しての分析】
特許マップの中でも、手間をかけてでもやるべきは、特許情報が示す技術(権利)内容の分析です。ここに関しては、様々な展開が考えられますが、概ね、その特許情報が示す物理的性質/化学的性質/電気的性質/心理的性質等に従ってカテゴリ(項目としての技術要素)を作成して分析します。また、その際、課題/解決手段/目的/効果等の属性での階層化ができます。主に以下の三種類の方法が考えられます。
分類・検索式による代用
Fターム、FI分類、IPC/CPC分類、その他の分類は、特許情報の中でその技術の特徴を表します。また、論理式(検索式)自体もその技術の特徴を表現していますので、これを項目として分析する方法です。商用データベースの操作のみでできる場合があります
形態素ワードによる項目化
要約、請求の範囲等から形態素エンジンによって切り出した言葉をアレンジ(値のコーディング)することで、これを項目化して分析する方法です。読み込み判断による分析よりも品質が落ちますが、労力が少ないことが一つの特徴です。(テキストマイニングの前処理にも応用できます)
読込み判断による付与
明細書を読み込んで内容を判断し、適切な項目に振り分けて分析する方法です。この様にして作成された表は、必ずしも視覚表現する必要がないほど有意義なデータになることが多いのですが、最も手間のかかる方法でもあります。
以上の方法は、それぞれの利点があるため、より品質重視の場合には、読み込み判断による付与に対して他の二つの方法を補助として、あるいはテーマにより使い分けて完成させます。
特許マップの効果
特許マップ(パテントマップ)の作成は、技術開発や技術経営のための羅針盤的な役割を果たします。また、特許マップの作成においては、市場情報のエッセンスを取り入れることで、変動要因を特定したり、明確な方向性の示唆を得ることができます。また、視覚化のアイデアを練り上げることで今までにないコミュニケーションツールとしたり、マップ作成過程で投じる労力により知識ベースが得られる様々な効果が期待できます。
尚、「特許マップ」は、視覚的情報表現として目立ちますが、視覚化手前の一覧表のデータは、地味ではあるものの技術の整理情報として役立ちます。